【やさしい軍事解説】イージス艦とは何か?通常の軍艦(護衛艦)との違いを解説。

やさしい軍事解説
出典:アメリカ海軍HP

 皆さんは”イージス艦”という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。陸上型のイージス・アショア配備計画が白紙になったこともあり、日本ではイージス艦の増勢が決まっています。今回はそもそもイージス艦とは何か、について技術観点も交えて解説します!

この記事を読んでわかること

  • イージス艦が何かが分かる
  • イージス・システムの技術が分かる
  • 世界が配備しているイージス艦が分かる

イージス艦の基礎知識

 そもそもイージス艦とは何なのでしょうか?端的に言うと、アメリカ海軍が開発した戦闘用の「イージス・システム」を搭載した軍艦の総称です。イージス・システムを積めば大きさに関わらず”イージス艦”と呼ばれるので、戦艦・空母・潜水艦などの艦種の一つとしてイージス艦があるわけではありません。したがって、イージス艦と呼ばれる軍艦には巡洋艦、駆逐艦、フリゲートが存在しています。
 イージス・システムはアメリカ製なので、似たようなコンセプトを持っていても、イージス・システムを搭載していない艦は”イージス艦”ではありません。必然、イージス艦は西側諸国しか保有しておらず、中国海軍やロシア海軍にイージス艦は存在しません。
 また、イージス・システムは高性能故に高価であるため、西側諸国の中でも限られた国しか保有していないのです(世界のイージス艦については後述します)。例えば、海軍国のイメージが強いイギリスやフランスも2024年現在はイージス艦を保有していません。
 イージス・システムとは何なのか?詳細は次章で解説しますが、一言でいうと目標の捜索、探知、識別、攻撃に至るまでの一連の流れを制御する総合的な戦闘システムです。もともとは防空用に開発されましたが、対地攻撃などあらゆる戦闘に対応できます。
 

軍事トリビア:イージスの由来

 イージス・システムの名前の由来はギリシア神話にて、最高神ゼウスが娘アテナイに与えた盾であるアイギス(Aigis)です。高性能な武器システムに対し、最強の盾の名を付けたわけですね。日本では弾道ミサイル防衛で馴染みがあるイージス艦ですが、名前の由来を聞くと何とも頼もしく感じます。
 余談ですが、イージス・システムは英語の頭文字をとってAWS(Aigis Weapon System)と略されることもあります。昨今流行りのAmazon製クラウドAWS(Amazon Web Services)と同じ略称です。

イージス・システムとは?強いのか?

 ではイージス・システムとはどのようなシステムなのでしょうか。イージス・システムは戦闘に関わるあらゆる局面に対応できる統合型のシステムであり、複数の要素で構成されます。一例ですが、多機能レーダー・指揮決定システム・武器管制システム・射撃管制システム・ミサイルなどです。
 イージス・システムの外見的特徴は多機能レーダー「AN/SPY-1」です。艦橋の表面に搭載される8角形のアンテナを持っており、外見的に他の艦とイージス艦の判別を容易にします。このアンテナを4面に配置して艦の全周をカバーし、同時に200以上の目標を追尾可能です。
 目標を大量に探知出来たところで、攻撃対象の選定を誤るようだと宝の持ち腐れです。自艦や僚艦へ向かってくるのミサイルなどの脅威を判別し、優先度をつけて対応することが必要です。探知目標のうちどのミサイルが一番最初に到達するか、狙いはどの艦か、などを速やかに見極め、適切な対応をしなければなりません。そのために使われるのが情報処理システムです。イージス・システムの動作モードにはシステムが全自動で対応する自動モードから、全てオペレータが手動で対応する手動モードまであります。通常の軍艦が基本的に自艦の防空のみ対処するのに対し、イージス艦は艦隊全ての防空を担うことが出来る、まさしく最強の盾なのです。
 イージス艦は高性能な軍艦であることは間違いないですが、一昔前の戦艦のように堅牢な装甲があったり、巨大な大砲を搭載しているわけではありません。武装自体は他の戦闘艦と共通している要素が多く、イージス・システムに由来する同時対処能力の高さが特徴の艦種といえるでしょう。

出典:海上自衛隊HP イージスシステムの特徴である8角形のアンテナがよくわかるアングルの一枚

世界のイージス艦

 最後に、2024年現在世界に存在するイージス艦を確認しましょう。イージス艦は世界でわずか6か国しか保有しておらず、希少な軍艦です。開発国であるアメリカと日本は言わずもがな、日本の隣国である韓国、オーストラリア、スペイン、ノルウェーがイージス艦を配備しています。アメリカ海軍は現役の巡洋艦、駆逐艦のほとんどがイージス艦なので、桁違いのイージス艦を保有しています。
  日本でイージス艦が話題になる時は北朝鮮からの弾道ミサイルに対応する場合が多いですが、イージス艦であればすべて弾道ミサイルに対処できるわけではありません。弾道ミサイルに対応することをBMDといい、日本の海上自衛隊の護衛艦はすべてBMD能力を持っていますが、アメリカのイージス艦は一部のみがBMDに対応しています。イージス艦に求められる役割は多く、弾道ミサイル防衛以外にも艦隊防空なども行う必要があります。北朝鮮からの弾道ミサイル防衛に即時対応するために、日本海に常にイージス艦が展開していますが、貴重なイージス艦が貼り付けにされてしまうため、弾道ミサイル対応用のイージス艦を新規建造予定です。

アメリカ海軍:88隻
  • タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦:13隻
  • アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦:75隻
海上自衛隊:8隻
  • こんごう型護衛艦:4隻
  • あたご型護衛艦:2隻
  • まや型護衛艦:2隻

※その他、4隻のイージス艦を追加建造予定

韓国海軍:4隻
  • 世宗大王級駆逐艦:4隻
オーストラリア海軍:3隻
  • ホバート級駆逐艦:3隻
ノルウェー海軍:4隻
  • フリチョフ・ナンセン級フリゲート:4隻

※なお、同国海軍はフリチョフ・ナンセン級の”ヘルゲ・イングスタッド”を損失しており、これは現時点で唯一の損失したイージス艦です。

スペイン海軍:5隻
  • アルバロ・デ・バサン級フリゲート:5隻
出典:海上自衛隊HP

結び

 今回はイージス艦について解説しました。イージス艦とはイージス・システムを搭載した軍艦の総称であり、高性能な艦ですが艦自体の戦闘力は搭載兵器に依存します。アメリカ海軍を除く各国海軍では保有数が少なく、艦隊の要となります。したがって、イージス艦はイージス艦以外の艦艇と艦隊を組み、それぞれの不足を補って運用されます。

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